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二刀で一刀が上手くなる

二刀と一刀の関係

 「一刀も満足に使えないのに、二刀なんか使えるわけがない。」
 「二刀ばかりやっていたら、一刀が下手になってしまうのではないか。」

 「二刀をやってみませんか?。」
というお話しをすると、ほとんどの方がこのように答えます。あなたもそう思ったのではありませんか?。

 一刀と二刀は全く別のものだと考えてしまう人が多いですが、実は一刀も二刀も同じ剣道なのです。そして一刀が剣道の理想型だとすると、二刀はその理想型に向かうための準備の段階、いわば基礎訓練に相当します。

 ですから、二刀を使えるようになることが、一刀を満足に使えるようになるための近道なのです。



【二刀は一刀の基礎訓練】

 あなたは、スキーをやったことがありますか?。

 スキーの経験がある人もない人も、初めてスキーを履いて練習をするときに、いきなり両足を揃えて滑るパラレルターンの練習から始める人はいませんよね。たとえ、上級者が両足を揃えて急斜面をスイスイと滑る姿に憧れたとしても、初心者の場合は、まずは両足のスキーをハの字形に開いたプルークボーゲンの練習から始めると思います。

 剣道の一刀と二刀の関係も、このスキーのパラレルターンとプルークボーゲンのような関係と考えてみてください。

 
 両足を揃えた美しい姿勢でスキー場のゲレンデ上部にある急斜面を猛スピードでスイスイ滑る上級スキーヤーは、一刀を華麗に操る剣道高段者と同じです。一方、初級スキーヤーは、ゲレンデ下部に広がる平坦で緩やかな斜面の上で両スキーを開いた少々不格好な姿勢で片足ずつ操作しながら左右に曲がる練習を繰り返します。

 しかし初級スキーヤーも、やがて足を開いたプルーク姿勢で安定して滑る技術を身につけてくれば、今度はゲレンデ中部のやや急な斜面へと移動して練習を続けます。

 最初は不格好に開いていたスキーも、中斜面でスピードが乗ってくると、だんだんと曲がるときだけ開くシュテムターンへと進歩してゆき、それは次第にパラレルターンへと近づいてゆきます。

  剣道の二刀も、スキーのプルーク姿勢と同じです。

 始めはバラバラだった左右の二本の剣の動きも、これを同調させてだんだんと洗練してゆけば、それはやがて1本の剣の動きへと近づいてゆくのです。

 これを、私たち「二天一流武蔵会」では、「二刀を一刀に遣う」と教えています。つまり二刀の修練は、洗練された一刀の動作を身につけるための基礎訓練だったのです。



【一刀だけの稽古は回り道】

 スキーの場合、初心者は両足を左右に開いて片足ずつ曲がる練習から始めますが、剣道の場合には、初心者も上級者と同じように両手に1本の竹刀を持って練習します。これはスキーに例えるならば、初心者に最初から両足を揃えて滑るパラレルターンの練習をさせるようなものです。

 スキーをやったことのある人ならばおわかりでしょうが、初心者が緩斜面で両足を揃えた姿勢でターンをすることは並大抵のことではありません。バランスが悪くて転んでばかりになってしまうでしょう。もしもこんな練習ばかりを続けていたら、ほとんどの初心者スキーヤーはスキーそのものに興味を失ってやめてしまうかもしれません。

 ところが剣道の世界では、このような不合理な練習法が普通に行われています。

 そもそも人間の行う動作は、左右別々に行うのが一般的です。通常では、前進するのに両足を一緒に動かしてぴょんぴょん跳んだり、物を前方に投げる時に両手を一緒に振ったりすることはしませんね。人間にとって、左右の動作を同調させて一つの運動をするということは、実はとても難しいことなのです。

 剣道の技術というのは、このように人間にとって非常に難しい動作を伴います。ですから、これを最初から完成されたかたちで習得しようとするのは少々無理があるのです。

 そのため、本来ならばスキーの練習のように、まずは両足を開いた姿勢で、左右の足の動作を一つずつ確認しながら、その動作を次第に連動させてゆくような練習方法をとらなければなりません。最初から両足を揃えた姿勢での練習では、転んだ原因、つまり失敗の原因がどちらの足のどういう動作に起因するものかも分かりにくくなってしまうからです。

 そこで、剣道でもスキーと同じように、まずは左右の手を分けて、それぞれの動作を確認しながら、それらを一つの協調運動として洗練させてゆくという練習方法が必要になってきます。この練習方法こそが、実は二刀そのものなのです。すなわち二刀の動作を一つの協調運動として洗練させてゆけば、それが一刀の剣道になるわけです。

 二刀の修練は一刀の剣道上達への最良の近道だったです。逆の言い方をすれば、二刀の稽古をせずに一刀の稽古のみに終始している人は、実は大きな回り道をしているのだということに気がつかなければなりません。


二刀で剣道の高みに登る

 ゲレンデ下の真っ平らな緩斜面で、両足揃えて滑ることばかりに腐心して練習しているスキーヤーは、なかなか上の斜面に登れません。両足を揃えたままだと姿勢が安定しないため、斜面がちょっと急になるとたちまち転んでしまうからです。

 しかし、スキーをハの字に開いて滑るプルークボーゲンの技術を覚えたスキーヤーは、だんだんと姿勢が安定してきて、多少斜面がきつくなっても滑れるようになってきます。すると、リフトに乗ってどんどんゲレンデ上部の急な斜面にも登ってゆきます。

 斜面が急になってスピードに乗ってくると、ハの字に開いたスキーの動きも洗練されてきて、やがてはターンするときにだけ開くというシュテムターンの技術に発展してゆきます。そして、このシュテムの技術が身につくと、このスキーヤーはもっと急な上部の斜面、いわゆる上級者コースにも登って行けるようになります。

 ゲレンデ最上部の上級者コースは、いわば上級者のみの聖地です。本来はパラレルターンを習得できていない初中級者は登って来られないコースだからです。ところがスキーを開いて滑ることを覚えたスキーヤーなら、多少格好が悪くとも上級者コースに登って来ることが出来てしまいます。

 ゲレンデ下部で、相変わらずスキーを揃えて滑ることばかりにこだわっているスキーヤーにとっては、登って行くことなど考えられもしない上級者専用コースに、ハの字スキーヤーは、ほんの少しの練習のみで登って行ってしまうのです。つまり、これは初中級者であっても、上級者と同じ世界を体験できるということです。



【剣道の攻め合い】

 剣道における攻め合いをチキンゲームに例えることがあります。チキンゲームというのは一種の度胸試しです。

 これは、たとえば互いに自動車に乗って、一定の距離を置いて向かい合い、相手の車に向かってアクセルを同時に踏んで全力疾走します。このまま行けば正面衝突です。その恐怖に負け、先にブレーキを踏んでハンドルを切ってしまった方が負けというゲームです。

 剣道の攻め合いも、互い打ち間に入り、そのぎりぎりの極限状態から、先に心を動かされて打ちに出てしまった方が負けます。剣道高段者と初心者の違いは、この攻め合いの中で、心を決して動かさない、いわゆる不動心を保てるかどうかに因るところが大きいでしょう。

 剣道高段者と対峙すると、この心と心の攻め合いに負け、堪えきれなくなって打ちに引き出されてしまったところを逆に打ち留められてしまうのです。

 ところが、二刀というのは2本の剣を持っているという物理的な優位性に支えられて、防御面での精神性がとても強くなります。つまり一刀に比べて簡単には打たれないという気持ちが強くなるのです。

 これはチキンゲームで、相手は普通の乗用車に乗り、自分はダンプカーに乗っているようなものです。乗用車とダンプカーでチキンゲームをやったら、ダンプカーが負けるはずはありません。

 二刀を持って自分より高段者と対峙すると、一刀ならば当然堪えきれなくなってこちらが打ちに出されてしまうような状況でも、もうほんの少し堪えて我慢することが出来るようになります。この差はほんの数百分の1秒、あるいは数千分の1秒という短い時間かもしれません。しかし、その間にお相手の高段者の方が先に引き出されて打ちに来てしまうということがあります。

「あ、高段の先生でも、ここで心を動かしてしまうんだ。」

 それを知ることは大きな収穫になります。そうです、初心者でも上級者しか見られない世界をかいま見ることが出来るのです。それが二刀の楽しさ面白さです。

 あなたも二刀を持って一刀高段者と同じ高みに登ってみませんか?。


二刀の極意は同時操作

 二刀流と聞いて太鼓のバチ捌きを想像する人は多いと思います。現に武蔵が幼年の頃、近くの神社で太鼓を打つ様子を見て二刀流を編み出したというようなことを書いている書物も時折見かけます。しかし二天一流に太鼓のバチ捌きに見られるような剣の操作はありません。

 では二刀をどのように使うものでしょうか?。実は左右の二刀は全く同じに扱うのが二天一流の基本なのです。



【二刀繰法の基本原則】

 二天一流が二刀を用いる目的は、二刀で戦うことそのものにあるのではなく、あくまで「片手で一刀を扱えるようになる」というところにあると以前に述べました。

 もし右手でも左手でも、それぞれ一刀を自在に扱えるようになったとしたら、これは一刀を持った人間が2人居るのと同じことになります。では、二人で一人の敵に向かうとしたら、どのようにするのが一番効果的でしょうか。

 よく、時代劇のドラマなどで、次のような場面を見ることはありませんか。

     ・・・・・・・・・・


 親の仇を探し続けた兄弟が、ようやくに目的の相手に巡り会います。しかし相手は兄弟よりも腕が立ち、まともに立ち向かったのではとうてい敵いません。

 --- 仮にこの時に、まずは弟が斬りかかり、次に兄が斬りかかるという戦法をとったのでは、当然のことながら2人とも斬り殺されてしまいます ---

 そこで兄弟は一計を案じ、まずは互いの心を合わせて一つにし、左右から同時に敵に向かって突進します。その結果、どちらか一人は敵の刃の下に命を落とすかもしれませんが、もう一人の方は、確実に相手を仕留め、仇討ちの本懐を果たすことが出来ます。

     ・・・・・・・・・・

 実は、これが二刀繰法の基本原則です。つまり、左右の手で持ったそれぞれの剣を片手ごとにバラバラに扱うのではなく、二刀の動きを一つにし、同じタイミングで一度に斬りつけるという、二刀による二ヶ所同時斬りです。

 ですから剣を二本持っていても、打ち込むタイミングと動作は一刀と全く変わりありません。



【二刀を一刀に遣う】

 二刀における手の内、体裁き、理合等は、決して二刀独自のものではなく、全て一刀に・・・というよりも剣道全般に通じるものです。

 したがって、私たち「二天一流武蔵会」の稽古は、大小二本の竹刀を用いた稽古を通して剣道本来の正しい技と心を修得することを目的としています。

 ですから二刀の修練は二刀流の世界だけで完結せずに、そのまま一刀の剣道に活かされなければなりません。逆の言い方をすれば、一刀に繋がらない二刀の技法や稽古法は邪道と言えます。

 このことを、先にも述べたように「二刀を一刀に遣う」と言って、修練上の最大の目標としています。

 このようなことから、二刀が上達すればもちろん一刀も上達しますし、一刀の稽古をないがしろにしては二刀の上達も望めません。二刀の稽古を始めるにあたっては、このことを十分に理解していただければと思います。


二刀の効果、その科学的証明

 2006年10月9日付の毎日新聞に、ちょっと興味深い記事が載りました。以下がその記事の内容です。

  •  「上達のカギは片腕より両腕で 運動、楽器など」  (毎日新聞, 2006/10/9)

  •  運動や楽器演奏で同時に両腕を動かすことを学習する場合、片腕ずつ練習してもさほど上達が見込めないことを、東京大とカナダ・クイーンズ大の共同チームが実験で見つけた。スポーツや音楽の練習のほか、まひした腕のリハビリを効果的に進めるヒントになりそうだ。米科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に9日発表した。

     東京大大学院教育学研究科の野崎大地・助教授(身体教育科学)らは、左腕に一定の力を加えて動かしづらくしたうえで、動く標的に左腕、あるいは両腕を伸ばして触る実験を繰り返し、効果的な学習の手法を調べた。

     その結果、左腕だけを使い標的を触れるようになった後、右腕も同時に動かすと、左腕の成績は7割まで落ちた。順番を逆にして、両腕を動かしながら左腕で標的に触れるようになった後、左腕だけを使うと、同様に7割の能力しか発揮できなかった。この傾向は利き腕に関係なく見られた。

     研究チームは、片腕だけを動かして覚える時と、両腕を動かしながら覚える時の脳の働き方が違うと推定。片腕ずつ技術を身に着けていく練習では100%の力を発揮できない可能性がある、と分析した。

     野崎助教授は「両腕をバランスよく使うことが重要。片腕ずつ練習するにしても、もう片方の腕を動かしているイメージを常に持ち続けると効果的だろう」と話す。


 上記の記事の内容だけではちょっと分かりにくいかもしれませんが、要約すると、

 (1) 片手だけで練習して、その機能を100%の発揮出来るように上達した能力も 
   → 両手を同時に動かすと、70%しか能力を発揮出来ない。

 (2) 両腕を同時に動かして、その機能を100%発揮出来るまでに練習しても、
   → 片腕だけ行うと、やはり70%しか能力を発揮できない。

 (3) この傾向は、利き腕かどうかは関係ない。

ということのようです。

 これを剣道に当てはめてみるとどうなるでしょう。

 一刀中段の剣道というのは、1本の竹刀を両手で持って同時に動かして打ちます。先の (2) の実験結果に基づく理論よると、一刀中段の練習をして、その能力を100%発揮出来るようになったとしても、それを片腕だけで行う場合、すなわち上段からの片手打ちのような場合には、元の能力の70%しか発揮出来ないというわけです。

 これをもっと簡単に言えば、一刀中段で剣道を究めた人も、上段をとると70%の実力しかなくなるということになりますね。

 では、最初から上段を専門に練習した場合はどうでしょう。これは先の (1) の実験結果に基づく理論によると、片手で打つ上段の技を練習してそれを究めても、両手を同時に動かして打つ一刀中段になると、やはり元の能力の70%しか発揮出来ない。
 すなわち、上段の専門家も中段になると、上段の時の70%の実力しかなくなるということになります。

 そこで、今度は二刀について考えてみましょう。

 二刀も上段と同じように片腕で竹刀を扱う技術です。ですからこれを単純に上記の実験にあてはめると (1) の実験結果と同じようになってしまいます。

 ところが二刀の場合は、上段のような片腕だけの練習ではなく、反対側の手にも竹刀を持ってそれを同時に動かすわけです。特に武蔵会で実践している「二刀を一刀に遣う」という理法は、竹刀そのものは片手で持っていますけれども、常に一刀中段のような感覚で両腕を同時に動かしています。ですから (1) と (2) のミックスなわけですね。

 ですから、二刀の練習をすると二刀ばかりではなく、両手で打つ中段も、片手で打つ上段も同時に練習しているのと同じことになります。つまり、二刀が100%なら、中段も100%、上段も100%ということになるわけです。

 この実験を行った野崎助教授も最後に述べていますが、
「両腕をバランスよく使うことが重要。片腕ずつ練習するにしても、もう片方の腕を動かしているイメージを常に持ち続けると効果的だろう」
ということのようです。

 どうですか?。この実験結果は、宮本武蔵の「二天一流」が「太刀を片手にて取りならはせん為なり」として二刀の修練を行うことの理由が科学的にも証明されたものと捉えることができると思ったのですが、皆さんはどう思われますでしょうか?。


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