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二刀の基本事項

二刀竹刀の規定と作り方

【二刀の竹刀の規程】

 財団法人全日本剣道連盟(以下「全剣連」と記す)では、二刀の竹刀について次のように定めています。

  表2 竹刀の基準(二刀の場合)

長 さ  男女共通   大刀 114cm以下   小刀 62cm 以下
重 さ  男性  大刀 440g 以上  小刀 280〜300g
 女性  大刀 400g 以上  小刀 250〜280g
太 さ  男性  大刀 25mm 以上  小刀 24mm 以上
 女性  大刀 24mm 以上  小刀 24mm 以上

 この規定は公式試合に出場する場合は遵守せねばなりませんが、普段の稽古においてはこの規定にとらわれることなく、自分の使いやすい竹刀を見つけることが肝要です。特に手の内の定まらない初心者が重すぎる竹刀を使いますと手首や肘の故障の原因となりますので、最初は年齢、体格、技量に応じてやや軽めの使いやすいものを選び、徐々に腕力に応じて正規の重さ以上のものを使用できるように稽古します。


【竹刀のバランス】

 二刀の大刀の長さ・重さの規定は中学生用の37竹刀に準じていますので、これをそのまま流用する方法もありますが、一般成人用の39竹刀を柄頭の側から柄革ごと6センチほど切り詰めた物を使用するとバランスが良くなります。  一般男性用の竹刀を切った物では重すぎる場合は、女性用の38もしくは39竹刀を利用すると良いでしょう。

 なお、女性や体格・体力の無い人の場合には、やや短めの34〜36の長さの物が使いやすいと思います。


【竹刀の制作】

 二刀用の竹刀を店頭に置いてある武道具店は希でしょう。多くの場合は竹刀工房へ注文して制作してもらうか既存の竹刀をもとに自作することになると思います。

 五輪書にも、兵法の道を学ぶにあたっては「諸芸に触れ、様々な職能の道を知ること」と謳っています。自ら竹刀を組み立てて、その構造やバランス等を研究することは、用具の特性を知り、剣道そのものの上達にも繋がります。最初は難しいでしょうが、二刀の竹刀を自作することにぜひ挑戦してみてください。

  ○二刀の竹刀制作のコツ

   ・大刀は柄頭の方から6センチ切り詰める。 (三九→三七に 三八→三六に 三七→三五に)

   ・切り詰めた竹刀の長さ分だけ柄革も柄頭の側から切り詰める。 (柄の長さは24〜28センチ程度)

   ・小刀は、三七〜三九竹刀の一番太い部分の節から柄頭の方向に22センチ測って切り詰め、
    次に柄頭から剣先に向かって61センチを測って先端を切り詰める。

   ・小刀の柄の長さは拳一握り半くらいが使いやすい。 (13〜15センチ)

   ・柄革の切り詰め方
      1,竹の棒などを使って柄革を裏返す
      2,先端から柄革を縫ってある糸を解いていく。
      3,必要な長さの所まで解いて、そこで糸を固く結び直す。
      4,不要な皮の部分を切ります。
      5,先端部分に数カ所穴を空けてタコ糸を通してきつく縛る。
      6,裏返した柄革を元に戻して出来上がり。


【鍔・鍔止め】

 二刀の竹刀は、鍔や鍔止めにも工夫が必要です。

 小刀側の拳は一般に前に出して構えることが多いため、稽古中に強く打たれたり体当たりでぶつかったりすることが多くなります。拳を保護するために、小刀の鍔は厚手でやや大きめ(直径9センチ以下)の丈夫な物を使用するのが良いでしょう。

 大刀の鍔は使用中に緩んで落ちて来ないように鍔止めに気を配ります。紐で留める方式や、緩みにくい鍔止め等を使用しましょう。

 鍔 ※参考 剣道試合・審判細則 第2条の3
 つば(鍔)は、皮革または化学製品の円形のものとする。その大きさは直径9センチメートル以下とし、竹刀に固定する。


二刀の持ち方や礼法

【全日本剣道連盟の規程】

 試合時における試合者の礼法等については、全剣連の定めた剣道試合・審判規則の「付1 剣道試合・審判要領」に次のように記載されています。

  『開始』
  1.試合者は試合を開始する場合、立礼の位置に進み、提げ刀の礼を行い、帯刀し、3歩進んで開始線で
   竹刀を抜き合わせつつ蹲踞し、主審の宣告で試合を開始する。

  『その他の要領』
  1.試合者が二刀を使用する場合は、次の要領で行う。
  (1)小刀および大刀を共に提げ刀する。
  (2)構えるときは、最初に右手で左手に持つ竹刀を抜いて左手に持ち替え、次に右手に持つ竹刀を構える。
  (3)納めるときは、最初に右手で持った竹刀を納め、次に左手に持った竹刀を右手に持ち替え、納める。
  (4)その他は、一刀の場合の要領に準じて行う。


【二刀の持ち方(提刀と帯刀】

 稽古や試合等において、二刀の竹刀は次の要領で扱います。

  ○正座のとき

   ・正座の場合には、大刀を外側に、小刀を内側にして左側に置きます。
   ・竹刀の刃部が内側、弦(峯側)が外を向くように置きます。
   ・竹刀の鍔は、大刀、小刀共に膝頭に揃えます。

○提刀のとき

 ・提げ刀の場合は、大小二本の竹刀をまとめて左手に持ちます。
 ・大刀を上に小刀を下にして重ね、刃部が上に、弦が下になるようにして持ちます。
 ・両手に一本づつ持ったり、小刀を脇に挟んだりしないようにしましょう。
 ・二刀が極端にクロスしないように気をつけましょう。
 ・場合によっては右手を添えても構いません。

○帯刀のとき

 ・左手で二刀を持ち、左腰に帯刀します。
 ・正面から見て大刀・小刀の柄頭が身体の中心線上に来るようにします。
 ・横から見たときに、切っ先上がりにならないように気をつけましょう。







【二刀の礼法(抜き方・構え方・納め方】

 蹲踞時の礼法における所作の巧拙によって、その人の剣道の技量までもが推し測られます。特に二刀の場合には、一刀の人の動作・呼吸に後れを取ることなくスムーズに抜納刀が出来るよう、十分に練習を積んでおくことが必要です。

 初めは小手を外して所作の順序を十分に練習し、慣れてきたら小手をはめた状態でも出来るように練習します。

  ○抜き方

   ・提刀姿勢で礼をし、右足から三歩前進して蹲踞しながら以下の要領で一本づつ抜きます。
   ・三歩目で柄に右手をかけ、三歩目で右足を踏み出しつつ、最初に左手で持つ方の竹刀を抜き、次に左足を引きつけながら抜いた竹刀を左手に
   持ち替えてもう一本の竹刀を抜き、両刀の切っ先を相手に向けて蹲踞します。


   >> 正二刀の場合 >>









   >> 逆二刀の場合 >>








  ○構え方

   ・蹲踞の際には、小刀を下に大刀を上にして中結い付近で交差させる中段十字の構えをとり、その構えのまま立ち上がります。
   ・両刀の剣先で相手を圧しつつ、機を見て大刀を上段に振りかぶります。
   


 << 逆二刀 <<


         >> 正二刀 >>







  ○納め方

   ・中段十字の構えで所定の位置に立ち、その構えのまま蹲踞します。
   ・最初に右手に持った竹刀を納め、直ちに左手に持った竹刀を右手に持ち替えて納め、それから立ち上がります。
   ・立ち上がりながら納めてはいけません。


   >> 正二刀の場合 >>  









【正二刀と逆二刀】

 一般に、右手に大刀を持ち左手に小刀を持つことを「正二刀」称し、左手に大刀、右手に小刀を持つことを「逆二刀」と称します。

 二刀の修練にあたっては、最初はどちらの方法で始めても構いません。それぞれの技量に応じて各自のやりやすい方法で始めてみましょう。

 しかし、二天一流の最終目的は「右手も左手も同じように使えるようになること」というところにあります。修練を積んで行くとやがて正二刀も逆二刀も両方使えるようになりますし、またそうなることを目指すのが二天一流の稽古です。


二刀の構え方

【有構無構】

 二天一流では、構えに関して「有構無構(かまえあってかまえなし)」とする考え方を持っています。

 すなわち本来「構え」というのは、敵がいない平常時において、いついかなる時も咄嗟の敵の襲撃に応じられる身構え心構えを言うのであって、いざ戦闘状態に入ったときにはそこに定まった構えなど有ろうはずがなく、ただ「斬る」という目的のために、もっとも振り良い位置に太刀を置くことこそが構えそのものであるという、実に合理的な考え方です。

 したがって二天一流には、「このように構えなければならない」という「定まった形の構え」というのは存在しませんが、太刀の置き所の基本原則という意味において、上中下三つの基本的な構えと左右二つの応用の構え、合わせて五つの構えが「五方の構」として伝わっています。


【二天一流「五方之構」】

○中段の構
 大刀・小刀共に中段に置いた構えです。全ての構えの基本になります。

○上段の構
 小刀を中段に置き、大刀を上段に置いた構えです。小刀を上段に置くと「両上段の構」に変化します。

○下段の構
 両刀を下段に置いた構えです。水の流れのような自然体の構えです。








○左脇の構
 小刀を中段に置き、大刀を左脇に置いた構えです。頭上や右脇が詰まったときに左脇から切り上げます。

○右脇の構
 小刀を中段に置き、大刀を右脇に置いた構えです。頭上や左脇が詰まったときに右脇から突き上げます。


【構えと太刀筋】


 一刀であれ二刀であれ、「斬る」ための基本的な太刀の道、いわゆる太刀筋は次の5方9通りしかありません。

  1、垂直方向への斬り上げと斬り下ろし(2通り)
  2、右上から左下への袈裟斬りと逆袈裟斬り(2通り)
  3、左上から右下への袈裟斬りと逆袈裟斬り(2通り)
  4、水平方向への左右の薙ぎ斬り(2通り)
  5、突き(1通り)

 二天一流では、この5方の太刀の道を通って、現在の構えから他の構えに剣を移動させることが、すなわち「斬る」ことであるという考え方をしています。したがって剣の移動に少しも無駄が無く、ひとつの構えは太刀の道の終着点であると同時に出発点となり、水の流れのように一瞬も滞ることなく自在に変化してゆきます。


【現代剣道における二刀の構え】

 戦いのさなか、千変万化する彼我の関係において、ただ「斬る」という目的のために最も振り良き位置に太刀を置くことが「構え」であるという「二天一流」の考え方に基づけば、現代剣道においても、竹刀や防具といった用具の特性、そして面・小手・胴・突きという打突部位の制限の規則に適合した、最も合理的な「竹刀の置き所」があり、それこそが現代剣道における「構え」であると考えられます。

 そこで、以下に「武蔵会」で通常用いる「現代剣道における二刀の構え」を紹介します。ただしこれらの構えは決して硬直して定まったものではなく、その場その時の「竹刀の置き所」という程度の意味合いであり、相手との戦いの中で構えは自在に変化し、片時もその形(かたち)や心がよどんだり居着いたりするものではありません。


  ○基本の構え

     中段の構え

      両刀の剣先で相手の中心部を攻め込みます。攻め込む位置は相手の構えや体勢に応じて胸、咽、顔面、
     目など、様々に変化するものであり、決して1カ所にとらわれてはいけません。

      中段の構えは、二刀の構えの基本中の基本であり、この構えで敵を制圧することによって、他の様々な
     構えに変化してゆきます。


     上下太刀の構え

      中段の構えから、大刀のみを上段に振りかぶった構えです。

      現代剣道においては最も多用される構えで、五方の構えの上段構えに相当する懸待一致の実用的な構え
     です。小刀の位置や大刀の角度・足の構え方等は、彼我の関係によって変化します。



※参考

 左より、
 ・正二刀右足前の構え
 ・正二刀左足前の構え
 ・逆二刀右足前の構え
 ・逆二刀左足前の構え



     下段の構え

      現代剣道においては、打突部位の制限により下からの「切り上げ」という太刀
     筋が使用できないため、通常は守りの要素が強い構えですが、右の「十字構え」
     と組み合わせることによって攻撃性のある構えに変化させることができます。


     十字の構え

      中段構えの変形で、真剣を用いた実戦では最も多用された構えと伝えられて
     います。現代剣道においてもその応用範囲は広く、十字に組む位置や高さ等は、
     相手によって様々に変化します。



     両上段の構え

      上段構えの変形で、大刀・小刀共に上段に構えます。この構えから両刀を同時に振り下ろして下段の構え
     に変わるのが二天一流の基本の太刀筋となります。

      両上段に構えたときは相手を眼下に見下ろして大いなる気で圧してゆきます。




  ○応用の構え

     霞の構え

      大刀を頭上に横一文字に構え、小刀を身体の正面にやや立てて構えます。

      上下太刀の構えが変化したものですが、小刀で突きと左右の胴を防御すれば、現代剣道では打つ場所が
     なくなってしまうという防御に強い構えです。



     右脇の構え(逆二刀では左脇の構え)

      大刀を腰に取り、両刀の剣先を相手に向けた構えです。大刀で相手を制しつつ
     小刀を活かします。

      ※(相手の大刀への小手打ちを受けながら小刀での面−右脇の構えで残心後
       に大刀で突き など)


     左脇の構え(逆二刀では右脇の構え)

      大刀の剣先を後方に向けて腰に構えます。相手の変化に応じて胴や小手を打ちます。

      ※(相手の面打ちを身体を反対方向へ捌いての胴打ち−左脇の構えで残心を示し、相手が出てきたところを小手打ち など)


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