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二刀の基礎技術

片手打ちって難しい?

【片手打ちに力はいらない】

 一般に二刀を使うにあたって最大のネックになるのは「片手打ち」が上手く出来ないということでしょう。

 よく上段や二刀を勧めると「両手でもまだ満足に使えないのに片手打ちなんて」と尻込みしてしまう人が大勢います。これは「片手打ちは力業」という認識があるからだと思います。両手でもしっかりとした威力のある打突は難しいのだから、片手で威力のある打突をするには相当の腕力が必要だろうと考えてしまうわけです。

 しかし片手打ちは力で行なうものではありません。砂を詰めた重い瓶や素振り用の太い木刀を振って必要以上に腕力を鍛えなくても、太刀筋と手の内のコツを覚えれば、さほど腕力のない子供や女性でも、片手打ちは可能なのです。


【片手打ちの太刀筋】

 一般的に「片手で打つ」という場合、竹刀を握ったその手首の位置、すなわち竹刀の柄頭付近を支点として剣先を大きく振ろうとするはずです。しかしこのような振り方ですと、竹刀を打突位置で止めようとしたときに、支点となる手首に大きな負担がかかり、並の腕力ではなかなかピタリと止められるものではありません。そのため、二刀や上段を志す人は、ビール瓶や一升瓶に重い砂を詰めて振り回し、手首の力を鍛えようとします。しかしこんなことをしなくても、もっと楽に振れる方法があるのです。

 あまり勧められるこはありませんが、試しに竹刀を縦に回転させながら前方に放り投げたと仮定してみてください。実際にやってみるまでもないことですが、回転しながら前方に飛んでゆく竹刀は、柄頭ではなく中央部の胴張りの付近を中心として回転するはずです。この回転の中心となる部分が竹刀の重心点です。実は片手打ちはこの竹刀の重心を中心とした自然な回転力を利用して打つのです。


【竹刀の重心を知る】

 先ずは竹刀の重心位置を確認してみましょう。鍔をつけた状態で手の上に載せて竹刀のバランスを取り、重心の位置を割り出します。

 鍔の重さにもよりますが、多くの竹刀は、おそらく胴の一番張った部分の少し前方ぐらいに重心位置があるものと思います。そこでこの位置に目印になるように色の付いたビニールテープを巻いてみます。


 さて、このビニールテープを巻いた竹刀の柄頭を片手で持って頭上に振りかぶります。持つ手は右でも左でも構いません。

 次に空いた方の手をビニールテープのある位置に持ってゆき、その竹刀の重心を軽く支えます。そして、この重心位置を意識しながら、その重心点を真っ直ぐ相手の顔にぶつけるような気持ちで、竹刀を縦に回転させるように前方に打ちつけます。

 回転する物体の回転の速さは、回転の中心から作用点までの距離に反比例します。

 わかりやすく言えば回転軸からの距離が近い物体ほど回転スピードは速くなるわけです。ちょうど両手を伸ばしてクールクールとゆっくり回転しているフィギアスケートの選手が、両腕を縮めた途端にクルクルッと素早く回転するのと同じ原理です。

 最初柄頭付近を支点として回転するように始動した竹刀は、回転軸となる柄頭から作用点である竹刀の先までの距離がその竹刀の全長いっぱいにありますが、打突の後半に回転の中心軸が重心付近に移動することによって、作用点までの距離がおよそ半分ほどに短くなります。これによって竹刀の先の回転スピードが上がり、打突の冴えを生み出すわけです。

 最初から最後まで柄頭を支点として振られた竹刀の重心は、最終的には円弧を描いて下方に向かうため、柄頭を持つ手でしっかり支えてやらなければ床を叩いてしまいます。

 しかし重心を中心に回転させるようにしながら、その重心を相手の面に向かって放り投げてやれば、竹刀は床に落ちずに前方に真っ直ぐ飛んでゆこうとします。この時の手の作用は、前方に回転しながら飛んでゆこうとする竹刀の一端を捕まえて、それを手前に引き戻すだけです。

 ですから重力に抗して竹刀を支えるほどの力を必要とせず、慣れてくればわずか二本指で掴んでいるだけでも竹刀を振れるようになってしまいます。


【片手打ちの練習方法】

 片手打ちの太刀筋を知り、その手の内を練習するには、剣道形用の普通の木刀を使うのが効果的です。腕力のない女性や小中学生の場合には、短い小刀を使うか、細身で軽い「二天一流」用の木刀を使用しても良いでしょう。

 先ずは竹刀のときと同じように木刀の重心位置を割り出し、そこに目印のビニールテープを巻きます。そしてこの木刀を片手でも持ち、峰打ちの要領で振ってみます。つまり木刀の刃の向きを逆にして、刃と反対側の峰の方で打つような感じで振る訳です。このように振ると、木刀の先端がその反りの方向に向かって前方に伸びてゆこうとするために、木刀の太刀筋がぶれにくく、その重心位置を中心に回転させるという感覚が掴みやすくなります。

 無理に力を入れて速く振ろうとする必要はありません。手首の力を抜いて柔らかく使い、木刀の自然な回転運動を妨げないような手の内を覚えることに専念します。慣れてくればさほど力を加えなくても、素早く力強く木刀を振るコツを掴めるようになるはずです。


【力強い打突を生み出す】

 竹刀の回転力を利用して打突する原理と、そのための手の内を学ぶ練習法については、前項の説明で理解できたと思います。しかし竹刀の回転力で得られた力のみでは素早く打つことは出来ても「斬る」ための十分な打撃力を与えることは出来ません。そこで次は力強い打突を生み出すために、竹刀に自らの体重を載せる方法を学びます。

 ここで「跳び箱」を思い浮かべてみましょう。跳び箱を跳ぶときに一般にどのようにするでしょうか。おそらく二の腕の下側の筋肉を使って、両手を跳び箱のマットに叩きつけるようにしながら、腰をぐっと入れて身体を持ち上げようとするはずです。このときの腕の下側の筋肉の使い方が大切です。肘をあまり曲げずに脇を締めて腕を大きく振ります。

 また腰が引けていては跳び箱を上手く飛ぶことが出来ません。両手を叩きつけるように振り、同時に腰を前に運ぶ意識が必要です。

 このイメージを持って竹刀を振ります。竹刀を振り出す瞬間に、前方の跳び箱を飛び越えるようなつもりで、腕の下筋を使ってぐっと体重を竹刀に載せるようにしながら腰を運んでゆくわけです。高く飛ぶことよりも、前方に身体を運ぶイメージを持つと良いでしょう。そしてこの時、僅かに手首を内側に絞り、手の甲がやや上を向くようにしながら小指薬指を締めます。

 これで重心を中心とした竹刀の回転力に、自らの体重を載せた腰の前進が伴い、打突に威力を増します。

 最初は手と足腰の動作がなかなか一致しにくいかもしれませんが、手の振りよりも足の踏み込みの方を早めに行うように意識してやれば、気剣体が一致しやすくなるはずです。何度も繰り返し練習してみましょう。


足の運び方が全ての要

【足の使い方】

 常に右手右足前で構える一刀においては、前進するときは右足から後退するときは左足からというように、足の運びに関して事細かに教えますが、両手に剣を持つ二刀では、どちらの足から運ぶかということはさして重要ではありません。何事にもとらわれない自由な思想を持つ二天一流においては、どちらの足からと規制すること自体が動作そのものを規制することにほかならないからです。その場の状況に応じてどちらの足からでも自在に動けることが大切なのです。

 ただし足の動かし方には基本原則があります。それは「陰陽の足」と言って、どのような場合にも必ず左右の足を両方動かすということです。片足のみの移動であってはなりません。前足を踏み込んだら後ろ足を引きつけるというように、竹刀を一振りする一拍子の動作の間に、足は右−左あるいは左−右と、必ず二足運ぶことが大切です。

 また、足の運び方は、つま先を少し浮かして踵を確実に踏むようにと教えますが、これは拇指丘(足の親指の付け根の盛り上がった部分)に加重してひかがみ(足の膝の裏の部分)を伸ばし、地面を押すような気持ちで滑るように運べということです。


 足首を伸ばしてかかとを浮かし、地面を蹴るような足の運びをしてしまうと、浮き足、飛び足、蹴り足という足運びになりますが、これですとひと足運ぶたびに重心が上下し、その重心の上下動が上半身の動作にも影響を与え、剣の自由な動きが阻害されてしまいます。

   ※ ひかがみを伸ばす際に、膝をピンと張ってひかがみを伸ばそうとすると、いわゆる突っ張り足になってしまいます。
     膝を張って伸ばすのではなく、かかとを下に踏むようにすることで、膝のバネが効いた状態でひかがみを伸ばすこと
    が出来ます。


【上半身を動かさない歩行法】

 足の動かし方を規制せずに、その場の状況においてどちらの足からも自由自在に移動しつも、なおかつ剣を振るう上半身の動作に影響を与えないためには、それに適した歩行動作を行う必要があります。

 それには日本古来からの独特の歩行法を学びます。現代ではあまり見られなくなってしまいましたが、能や歌舞伎などの伝統芸能や相撲のような日本独自の武術では不可欠の歩行動作です。俗にナンバ歩きや飛脚走りなどと呼ばれることもあります。

 まずは一般的な歩行動作を考えてみます。

 一般の歩行動作では、例えば左足で地面を後方に蹴れば、その力は足を通して腰に伝わり、腰はその力を受けながら腰全体を上方から見て左回り(反時計回り)に回転させることによって右足に伝え、その力を受けて右足は前方に振り出されます。

 そしてこのとき上半身にある肩は身体全体のバランスを取るために腰とは反対方向に回転し、これによって右足の前進に伴って反対側の左手が前方に振り出されることになります。これが私たちが普通に行っている歩行動作です。

 一方、伝統芸能や武術などに見られる歩行法では、左足で地面を押し、右足を前方に踏み出す際に、腰を上から見て右回転(時計回り)させるように使います。

 このような腰の使い方をしますと、左足で蹴った力を利用して右足を高く振り出し、身体全体で遠くに飛ぶというような動作はしにくくなりますが、腰の前進に伴って右足が滑るように前方に出てゆくために、重心が常に両足の中間点に位置して上下動しにくく安定した姿勢を保つことが出来ます。

 更に、この腰の回転に伴って、肩は身体全体のバランスを取るために腰とは反対回り(反時計回り)に回転させます。これによって右肩が前に左肩が後ろに引かれるかたちになりますので、自然に右手が前に左手が後ろに振られます。つまり、右足の踏み出しの際に左腰を出す意識によって右手が前に振り出されますから、結果として右手右足が同時に出るという歩行動作になるわけです。

 実際にこの歩行動作を連続して行いますと、普通の歩行動作ほどには腰は大きく回転しません。そして反対方向に回転する肩の動きと相殺するため、結果的に上半身はほとんど動かずに、足だけが滑るように移動するという歩行法が完成します。つまり剣を持つ上半身に影響を与えず、自在に移動できる足の運び方が備わるわけです。

 最初はなかなか難しいでしょうが、一ヶ月ほど意識して練習すれば誰でも出来るようになりますので、ぜひ練習してみてください。


二刀の使い方の原則

【二刀を同時に使う】

 二刀の構えのページで述べたとおり、現代剣道で一般的に用いられる二刀の構えは、小刀を中段に構えて大刀を片手上段にとる「上下太刀」と呼ばれる構え(二天一流の上段構に相当する)が主流です。

 このことから多くの人は「二刀流」というのは 「小刀による小太刀の技に大刀による片手上段の技を組み合わせたものである」と考えてしまうようです。

 つまり小刀で相手の竹刀を払ったり押さえたりして敵の構えを崩し、隙のできたところを頭上の大刀で一撃する。あるいは相手の打ち込みを小刀で受けておいて大刀で打ち返す。これが二刀の基本技であると考えるわけです。

 しかし、二刀の扱いを小刀と大刀の組み合わせで考えると迷い道に陥ってしまいます。左右の二刀は全く同じに扱うのが二天一流の基本であり、稽古を通して左右どちらの手でも一刀を自在に扱えるようになることが二天一流の目的です。


【二刀における攻防の考え方】

 一刀におけるオーソドックスな構えは中段ですが、五輪書に「中段は構への本意なり」とあるように、二天一流においても両刀を中段に置くことは最も基本的な構えとされています。

 この二刀を眼前でクロスさせて相手に差し向ければ、いわゆる中段十字の構えになり、この大小二本の竹刀で作られた十字の壁は、相手と自分とをさえぎる強力なバリアとなります。ちょうど大手門をぴたりと閉じた城塞のようなかたちであり、完璧な防御の構えと言えます。しかしそれは同時にこちらからの攻撃もしにくい構えでもあるわけです。

 こちらから打ち込んでゆくには、この大手門を開かねばなりません。

 そこで、十字に組んだ二本のうち、小刀はその切っ先を相手の正面に向けたまま、大刀を上段に振りかぶります。

 これが二天一流の上段構に相当する「上下太刀」と呼ばれる構えです。

 こうして十字を上下に開くと、小刀での攻め(敵状視察・先鋒隊)と大刀での撃ち込み(本隊による総攻撃)が可能な攻撃の構えに転じますが、同時にこちらの中央部にも守りの隙ができることになります。敵はそこに乗じて真ん中に攻め込んで来ますので、上下に開いていた二刀を一瞬に中央に集めて一つにし、小刀で相手の剣を打ち、同時に大刀で相手の面または小手を打ちます。これが二刀による攻防の基本的な考え方です。

 一般に二刀流は、相手の攻撃を一方で受けつつ他方で打ち返し、打つ際は一方で打ちながら他方が防御に回るというものだと考えられがちですが、実は二天一流には「守りの剣」はありません。

 剣道では「守り」の気持ちを持つことは禁物とされています。気で相手を圧して行ってここぞというときには一切の迷いを裁ち、ただ一撃に「打ち切る」というのが現代剣道が求めている姿です。防御のための剣を持たず、左右二刀とも攻撃のためにフルに活用させるという二天一流の攻防の考え方は、まさにこの剣道の理念そのものと言えると思います。


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