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現代剣道における二刀流

平成における二刀の現状

 戦後の剣道の発展の中で、時代を平成に移して初めて剣道界において二刀流が本格的な研究の対象となりました。殊に初期においては試合・審判規則も二刀についての記述が充実するようになり、また平成3年に学生剣道における二刀流の復活が決定されたことを受け、全日本剣道連盟による現行規則である平成7年規則では女性の二刀使用に際しての基準が初めて設けられるなど、二刀流も剣道であるという認識が定着しつつあることを物語っています。

 以下、引き続き試合・審判規則から二刀流の現状について考察し、復権の原動力となった学生剣道における二刀流の実際を検討していくことにより、二刀流復活の意義並びに問題点について検討したいと思います。


【試合・審判規則改正をめぐって】

 昭和62年10月より施行された全日本剣道連盟の試合・審判規則は基本的には昭和54年施行のものを踏襲しており、竹刀の規格が一刀、二刀ともに改定されたこと、また打突部位においては小手部のうち二刀の構えの場合の左小手が明記されたことが主な改正点でした。

 この規則を受けて、平成元年3月16日に「試合運営上留意すべき事項」が全日本剣道連盟より施行されることになり、改正規則の趣旨をより徹底して試合運営を行うこととなりました。この中で二刀については構え方と納め方についての規定が加わりました。

 この「試合運営上留意すべき事項」には次のとおり記されています。

  第1. 試合者の留意すべき事項
     1.試合者は試合開始時および終了時前後に次の要領で行う。(中略)

     (二刀の構え方と納め方)
     (13)試合者が二刀を使用する場合は次の要領で行う。
        ア 小刀および大刀を共に左手に提刀する。
        イ 構えるときは、最初に右手で左手に持つ竹刀を抜いて左手に持ち替え、次に右手に持つ竹刀を抜いて構える。
        ウ 納めるときは、最初に右手に持つ竹刀を納め、次に左手に持つ竹刀を納める。
        エ その他は一刀の場合の要領に準じて行う。

 二刀の竹刀の構え方と納め方については、それまで二刀を遣う者によってまちまちであったようです。この「留意すべき事項」が制定される前は二刀を右手で抜いてからそれぞれの手に竹刀を持ち直すやり方が一般的であったようですが、これも特に決まっているわけではなく、最初の1本を抜いてから2本目を抜く途中で抜いた竹刀を腋に挟んだり、既に1本を抜いた状態で試合場に入場したりという構え方もあったりということで、今回の「留意すべき事項」で二刀の構え方と納め方を定めたことで正二刀の場合は最初に小刀を抜き、次に大刀を抜いて構え、納めるときは大刀、小刀の順で納めることが、また逆二刀の場合は大刀、小刀の順に抜いて構え、小刀、大刀の順に納めることが統一されたことになります。

 これに続いて、平成3年には全日本学生剣道連盟が主催する大会要項での「2本の竹刀を同時に使用することはできない」という条項を削除し、学生剣道において戦後はじめて二刀による試合の出場が認可されました。

 また平成7年に改正された試合・審判規則において、先の学生剣道における二刀復活も関連して、二刀に対する規定についてより積極的な議論が全日本剣道連盟においても行なわれるようになります。平成の初期は、戦後において最も二刀に関する意識や関心が急速に高まった時期であると言えるでしょう。


【平成7年度施行試合・審判規則】

 全日本学生剣道連盟において二刀の使用が許可されたこともあり、二刀についての改正も全日本剣道連盟による試合・審判規則改正の重要なポイントとなりました。特に問題となったのは小刀についての問題で、重さについてや実際の試合における小刀の有効はどの程度かということについて審議されました。このような問題は当時明確な線がでていないこともあり、慣行で行われていたのが実情といった状態でした。

 今回の規則改正に伴う二刀の本質的な議論は今回が初めてであり、このことは二刀流が一部の愛好者だけが細々と行なっているものから、有効打突の本質的な議論が行われたことにより二刀流も剣道の一部であるという考え方が一般的に浸透してきたことを如実に示していると考えます。

 前述の谷口潔教士は、
 「全剣連(全日本剣道連盟)で二刀を認めているといっても、現状のように有効打突の判定に統制がとれていないようでは、二刀を認めているということにならない。全学連(全日本学生剣道連盟)の先生方が学生の二刀禁止を解除するに当たってこの問題に本格的に取り組まれ明確な解釈が下されれば、全剣連に対して二刀の有効打突判定の統一に寄与することになる。そうなれば学生禁止解除は学生の問題だけでなく、広く一般の剣道に二刀の正しいあり方が示されることになって一層意義あるものとなる」
と述べていますが、まさに今回の平成7年4月に施行された試合・審判規則によって二刀について従来よりも更に細かい内容が盛り込まれることとなりました。

 改正された試合・審判規則は「試合・審判規則」と「試合・審判細則」によって構成されています。次に同じ平成7年4月に制定された「試合・審判運営要領」、平成8年3月に制定された「試合・審判規則の改正と運用上の要点」とともに、二刀に関する内容を抜粋します。


「試合・審判規則」・「試合・審判細則」より

規則第3条

 竹刀は、竹または全日本剣道連盟が認めた竹に代わる化学製品のものとす る。竹刀の構造、長さ、重さ、つば(鍔)の規格などは、細則で定める。

細則第2条
 規則第3条(竹刀)は、次のとおりとする。
 2.竹刀の基準は、表1および表2のとおりとする。ただし、長さは付属品 を含む全長であり、重さはつば(鍔)を含まない。



表1 竹刀の基準(一刀の場合)
性別 中学生 高校生
(相当年令の者も含む)
大学生・一般
長さ 男女
共通
114センチ
メートル以内
117センチ
メートル以内
120センチ
メートル以内
重さ 男性 425グラム以上 470グラム以上 500グラム以上
女性 400グラム以上 410グラム以上 420グラム以上


表2 竹刀の基準(二刀の場合)
性別 大 学 生 ・ 一 般
大 刀 小 刀
長さ 男女
共通
114センチ
メートル以内
62センチ
メートル以内
重さ 男性 425グラム以上 280〜300グラム以内
女性 400グラム以上 250〜280グラム以内


  規則第14条
    打突部位は、次のとおりとする。(細則第3図参照)
      1.面部(正面および左右面)
      2.小手部(右小手および左小手)
      3.胴部(右胴および左胴)
      4.突部(突き垂れ)

  細則第13条
    規則第14条(打突部位)は、第3図のとおりとし、面部および小手部は、次のとおりとする。
      1.面部のうち左右面は、こめかみ部以上。
      2.小手部は、中段の構えの右小手(左手前の左小手)および中段以外の構 えなどのときの左小手または右小手。


  「試合・審判運営要領」より

   『その他の要領』
     試合者要領
      1.試合者が二刀を使用する場合は、次の要領で行う。
         (1)小刀および大刀を共に提げ刀する。
         (2)構えるときは、最初に右手で左手に持つ竹刀を抜いて左手に持ち替え、次に右手に持つ竹刀を構える。
         (3)納めるときは、最初に右手に持った竹刀を納め、次に左手に持った竹刀を右手に持ち替え、納める。
         (4)その他は一刀の場合の要領に準じて行う。


  「剣道試合・審判規則の改正と運用上の要点」より

  第12条
    (二刀について)
      ○小刀での打突が有効打突になるには、大刀で相手を制している場合で、打った方の肘 がよく伸び、充分な打ちで条件を満たしている
      ことを必要要件とする。但し、つば競り合いでの小刀での打突は原則として有効としない。
      ○試合中、竹刀が破損し、代えの竹刀がなければ、試合不能として、負けとする。
      ○二刀のつば競り合いは、小刀を下に、大刀を上とし、二刀を交差する形で指導する。


 この平成7年の改正は、昭和54年以来の大改正であり、開始線の設定、つば競り合いからの「分かれ」の導入など、二刀のみならず試合全般においても大きな変更がなされました。

 その中で二刀についての変更点は、第1に竹刀の規格が改定されたことです。これについて、まず女性の竹刀基準が新しく定められました。改正前の規則では女性が二刀を遣うことを禁止した内容はないので当然二刀を使用することは問題ないわけだが、ただ全日本剣道連盟の規則通りに二刀を遣うとすると、一般女性の場合一刀ならば420グラム以上の竹刀を使用するところを二刀の場合片手で425グラム以上の大刀を使用しなければならず、さらにもう一方の手で360グラム以上の小刀を使いこなさなければならないことから女性の二刀は実質不可能でした。

 しかし今回女性の二刀の基準が定められたことにより、女性にも二刀が遣えるよう配慮されました。ここで女性の二刀の基準が試合・審判規則に明記されたことは画期的なことですが、基準では大刀は400グラム以上とされています。大刀の竹刀の基準は男女とも中学生と同じ基準ですが、男性の場合は一刀との差が75グラムあるのに対して、女性の場合その差は20グラムしかなく、実際に二刀を遣うには負担が多いと考えられます。女性の場合の大刀の適正な重さについては今回の数字をたたき台にしてより研究が進むことが急務であると言えるでしょう。

 竹刀基準改定の2点目は小刀の重さの改定です。今回の改定で上限と下限が設けられましたが、小刀の重さの基準の検討は工学的実験が参考とされ、小刀の打撃力の強さが実験により科学的に明らかにされたことが大きな影響を与えていると推測されます。昭和62年規則において特に明確な理由がないまま265グラム以上から360グラム以上へと改正がなされましたが、その重さによる打撃力が科学的に発表されたこともあり、男性は280〜300グラム以内へと改正され、女性は250〜280グラム以内と初めて基準が設けられました。

 以前の規則通りに竹刀を作ろうとすると小刀が太くならざるを得ず2本の竹刀のバランスを欠いたものとなるきらいがありましたが、今回の改正でこの点は改善されたと言えるでしょう。今後とも打撃力などの観点からより研究を進め、適切な基準作りを追及していくことが不可欠だと思います。

 改正点の第2は打突部位が改正されたことです。昭和54年に定められた胴胸部への突きが有効打突とはなくなり、突き垂れのみとなりました。この理由として、胸突きの危険性の問題、そして当初の胸突き設定の目的が達成されたこと、実技の難易度に対する修錬にこそ意義があるということ、一方にのみ負担をかけるのは規則の趣旨になじまないなどということが挙げらています。

 第3は小刀の有効打突の基準が初めて運用上の要点に明記されたことです。これは今まで統一見解がなかったことや二刀と稽古や試合をすることがほとんどなかったため、どの打ちを有効打突と見なせばよいか確固とした基準が審判員の中になく「小刀での打ちは有効にならない」という不文律がありましたが、今回このように明記されたことは画期的なことであると言えるでしょう。

 しかし内容から鑑みるに、やはり実際に小刀で有効打突を得ることは相当困難であると考えられます。なぜなら、小刀の有効性はその長さゆえに接近戦で最もその威力を発揮するにもかかわらず、剣道の中において接近戦であるつば競り合いでの小刀の打突は原則として有効としないことが明記されているからです。

 二刀流実践者は、打突の技術は大刀のみならず小刀もあると言っていますが、実際の稽古や試合において小刀は相手の攻撃を防ぐ「盾」の役割ばかりが目立ってしまうこともあり、二刀流を知らない者には小刀での打突が想像しにくいことはまだ問題点として残っています。この問題を解消するには二刀流実践者が今まで以上に小刀での打突を行い、その打突としての有効性を知る必要があるでしょう。それにより、また新たな議論が展開され、この規定の内容もよりふさわしいものへと変わっていくと考えます。

 また「大刀で相手を制している場合」ということがこの文では不明瞭であると思われます。「相手を制する」というのは実際に大刀で相手の試合を封じることを意味するものか、または大刀で相手を気で威圧し、そのときに小刀で打突をしたものも有効となるのか、この両方が認められるのかが運用の要点からは判断できません。実戦の場を想定したより明確な内容が求められるでしょう。

 以上のように平成7年度の規則によって二刀流の内容もかつてないほど充実してきたことは、現在の剣道においてその価値が再認識されたことを示していると言えるでしょう。実質的な面から言えばまだ不充分であることは否めないが、この改正を機会に二刀流実践者が増えることによって、内容もより充実するものと考えます。

 さて、戦前の二刀流流行の主役が学生であったように、二刀流の後継者となるべきは学生でした。今回平成7年の改正時に二刀流が改正の対象になり得たのは、平成3年の全日本学生剣道連盟による二刀流での試合出場を許可したことが影響していると思われます。


学生剣道における二刀の復活

【全日本学生剣道連盟における二刀流の解禁】

 全日本学生剣道連盟は平成3年10月19日の評議員会並びに11月16日の学生幹事会で「2本の竹刀を同時に使用することはできない」との条項削除を決定しました。

 戦後学生剣道が学校剣道として再出発した当時より、全日本学生剣道連盟は二刀の使用を一貫して禁止してきました。しかしこの間、学生連盟内部において二刀の問題について検討を要望する声もありました。これはやはり学生の二刀流禁止が続けば二刀流の後継者が育成されず、また現在二刀流実践者も高齢となり、このままでは二刀流の伝統が途切れてしまうことへの危惧に外ならず、「二刀流の灯を消すな」と実践者の間から叫ばれたからです。

 この危機感から旧高専剣道のOB有志より、全日本学生剣道連盟へ二刀問題の検討に関する要望書が提出されました。全日本学生剣道連盟はこれを受けて評議員会において、関東学生剣道連盟でこの問題を検討し、その結果を全日本学生剣道連盟評議員会に提出し、評議員会でそれをもとに再検討することになりました。関東学生剣道連盟では常任評議員会を開き、二刀問題検討小委員会を設置し、検討した結果を常任評議員会に諮りました。

 この時点で二刀を検討する理由として、全日本学生剣道連盟評議員会では
  (1)伝統的運動文化としての剣道には、一刀だけではなく二刀を用いる方法もある
  (2)各剣道界に多くの剣士を輩出している学連が二刀を禁じているため、全国的に見ても二刀を用いる剣士が見られなくなった。この時代では、
    もっと自由な雰囲気があってもよいのではないか
  (3)二刀に関する研究が皆無に等しい
という3点が挙げられています。

 特に(3)は、二刀を禁止したことに起因する必然的な結果であって、二刀の使用を認めることによって二刀の研究も進むと考えられます。

 それでは(1)の考えがあるにもかかわらずなぜ全日本学生剣道連盟は戦後二刀を一貫して禁止してきたかというと、
  (A)競技として同じ条件で試合をさせるという考え方から禁止してきた
  (B)学生剣道は勝負にこだわり易く、勝つための手段として行われ、二刀のその弊害を助長するという考え方から禁止してきた
という2点を同評議員会では挙げています。

 しかし、もし(A)の考え方に一般性を持たせるとすれば、相手が上段の場合でも、その内容が該当することになり、中段対上段も禁止されねばならないはずです。それにもかかわらず全日本学生剣道連盟が対上段に対して実際に特別な措置をとったことがないことを考えれば、二刀を禁止するという全日本学生剣道連盟の(A)のような説明は不合理です。

 よって全日本学生剣道連盟による二刀禁止の真の理由は歴史的に考えても(B)が中核となると言えます。これは昭和5年から学生の大会で二刀を禁止したことを戦後も踏襲したものと考えられます。しかし禁止から60余年が経過し、剣道そのものも大きく変化したことから二刀に関しても上述のように検討課題として浮上してきたわけです。

 さて、学連が二刀の禁止を解除する場合の理由として
  (あ)二刀を奨励はしないが禁止もしない。学生に選択の自由を与える
  (い)剣道技術に幅を持たせ、二刀の技とその対処に技の工夫研究をさせる
との2点があります。この2点はともに正当な内容ですが、二刀を許可するだけで特にその後の処置を行わないことは、二刀復活の本来の主旨から外れることになります。

 というのは、二刀復活は今後も二刀を剣道の一つとして発展させていくことを意味するものですから、今まで二刀を禁止していたことで二刀そのものの一般的な知識や理解もなく、また学生が実際に二刀を稽古してみたいと考えても二刀を正しく指導できる指導者もほとんどいないのが現状だったからです。

 (い)のように学生自身が創意工夫をして技術修得をしていくことも大切ですが、それ以前に基礎となる部分は剣道を始めようとする初心者には適切な指導者が必要であることは言うまでもないように、二刀についてもその基礎の部分は適切な指導者による指導が不可欠です。自己流で身につけてしまうと悪癖を悪癖と気付きにくく、剣道修行の本筋を取り違えてしまうことにもなりかねません。このような事態を防ぐためにも、連盟レベルでの二刀に関する講習会の開催が不可欠です。

 この点に関しては、平成3年2月に、全日本学生剣道連盟小委員会委員、武道学科を有する体育系大学指導者と旧高専経験者有志の出席により二刀の指導、審判法について研究会を開催しました。これはまだ正式に二刀使用が許可される以前の段階ですが、以下に述べるように充実した内容でした。

 それは
  (1)竹刀の扱い方については全日本剣道連盟の試合運営上の留意事項に基づいて行うこと
  (2)構え方については、実践で最も多く使われる「上下太刀の構え」の場合、正二刀(左手小刀)、逆二刀(右手小刀)のいずれの場合も、
    足の構えは右足前、左足前があること、大刀の位置は上段(片手上段)の構えに準ずること、中段の場合は大刀を相手の竹刀に合わせて
    それに小刀を添えて構えること、大刀を握る位置は規定せず今後の課題とすることが確認され
  (3)竹刀の重さについては小刀の重さは全日本剣道連盟の規定では(当時)360グラム以上とあるが重さについては疑問があること、
    (当時)女子の竹刀の重さや長さの規定はなく今後の課題とすること
  (4)つば競り合いの仕方は特に規定せず、二刀でも一刀でもつばとつばが接している状態であればつば競り合いとして認めること
  (5)すべての技の有効打突の定義は同じであること

 反則について、
  (A)相手の竹刀を小刀及び大刀で不当(公正を害する行為)に捲き押さえる状態を継続した場合は、合議の上で反則とする。但し次の打突へ
    のきっかけとなる瞬間的な竹刀での捲き押さえは反則にならない、
  (B)相手に押されて、抱き抱えたり捲き込む状態を継続した場合は反則とする、ということが確認されました。

 このように研究会も行ないながら検討した結果、平成4年から学生の大会で男子の二刀による出場が可能になりました。それによって実際に二刀で出場した選手も現れるようになります。平成7年からは男子と同様に女子も学生大会での二刀使用が可能になりました。


【学生二刀流剣士の実際】

 学生剣道界に再び二刀の使用が許可されたことは、剣道界のみならず、その独自性から一般新聞紙を中心としたマス・メディアも報じました。

 特に女性の二刀流解禁は注目され、平成7年5月20日に行われた第27回関東女子学生剣道選手権大会において史上初の出場を果たした国士舘大学の乙津敬子3段は、翌21日の毎日新聞に『初見参!!女二刀流』という見出しで大会出場の記事が掲載され、また読売新聞も同年7月26日付で『武蔵の二刀流 女子にも解禁』という見出しで、やはり乙津3段が登場しました。両紙とも二刀流解禁の過程、二刀の構え、試合結果と本人のインタビューが掲載されています。

 また剣道誌の『剣道日本』においても特集の中で登場しており、二刀をとるいきさつや二刀の稽古内容、二刀の魅力についてインタビューに答えています。

 男子においては、平成7年7月6日付の毎日新聞において、9日に行なわれる第43回全日本学生剣道選手権大会に二刀でて初出場を果たすこととなった金沢大学の波木将生3段が『平成の武蔵?二刀流が見参』との見出しで登場し、並み居る強豪相手に対し戦いぶりが注目されるとの内容が記事として掲載されました。

 彼らの他にも学連主催の大会では東京大学の前田直之3段や麗澤大学の岡本誠4段らが出場していますが、共通して言えることは二刀の稽古に当たって二刀を知る師がいたことです。

 各大学の監督やOBの中に二刀の剣士がいて、その指導に当たったことが大会出場という結果をもたらした要因の一つであると考えられます。

 なお構えは乙津選手を除き逆二刀であり、現在の二刀は逆二刀の方が正二刀よりも主流であると考えられます。戦前の学生二刀では正二刀が中心であったことと対照的です。その理由として、逆二刀は大刀を上段に振りかぶるため、左上段の技が応用できることが推測されます。


【剣道界における二刀流の役割】

 その後もまだ少数ではありますが、二刀で試合に出場する学生も現れています。二刀流解禁を機に二刀を学び、その成果を試合で試すことは自己自身の剣道修行の中でも重要な役割を果たし、また試合に出場することで他の出場者や観客などに対して剣道の中に二刀が厳然として存在することを印象づけ、普及発展の役割を果たすことになり、好ましいことと言えるでしょう。

 ただし、二刀の剣理をわきまえずに興味本位で二刀で出場することは厳に謹まなくてはなりません。なぜならばそのようなことは二刀を解禁した趣旨に反するものであるし、未だ二刀について知識をもたない者に対して二刀を誤解させてしまうことになるからです。だからこそ学生剣道の二刀復活までの経緯及びその趣旨を理解した上で二刀の習練に励み、剣の修行の一環とすることが本来の姿ではないでしょうか。

 現在施行されている平成7年度の試合・審判規則は、二刀に対して従来では考えられなかったほど詳細な規則が定められています。これは二刀について一般的な理解が普及してきたことも一因ですが、この改正に当たり学生の二刀許可により登場する二刀流剣士が、戦前のような勝利至上主義にならないように懸念された結果であると考える方が適切です。

 「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である」という、昭和50年に全日本剣道連盟が定めた剣道の理念に則って修行していく私たちが、このように二刀流に焦点を当ててその歴史を省みることは、過去の過ちを繰り返さないための警鐘です。このような点から考えれば、二刀流実践者のみならず、すべての剣道修行者が認識すべき内容を持つ普遍性が二刀流史には存在し、その正確な認識によって、また二刀流という立場から現在及び将来の剣道を注視し、剣道界発展のために寄与することが、紆余曲折を経て現在まで継承された二刀流の役割であると考えます。


※このページの掲載写真の一部は、スキージャーナル株式会社「剣道日本」よりご提供いただきました。

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